
ムクドリをなぜ駆除しないのか。理由のひとつは法律にある。
ムクドリは鳥獣保護管理法の対象になっている野鳥で、捕獲や殺傷には原則として許可がいる。
市役所に頼んでも、私有地の巣は撤去してもらえないことがある。浦安市や西東京市は、市では撤去しないと書いている。
ムクドリは狩猟の対象にもなるが、狩猟には期間や場所の制限があり、ひなや卵は狩猟の対象外だ。
このページでは、法律の面からムクドリをなぜ駆除しないのかを説明し、市役所に頼めること、戸袋や屋根裏に巣がある場合の巣立ちまでの日数、そして自分でできることの限界について述べる。
ムクドリはなぜ駆除しないのか|鳥獣保護管理法で捕獲に許可が要る
根拠となっているのは、鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)の第8条だ。
「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。」
環境省は、この法律について次のように説明している。
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律では、鳥獣又は鳥類の卵については、狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取(以下「捕獲等」という)が禁止されています。」
例外の一つは、第9条に基づく許可を得た場合だ。
許可は環境大臣か都道府県知事が出す。
環境省によると、「多くの都道府県では、…その捕獲許可権限の一部を市町村長に移譲しています。」
無許可で捕獲などを行った場合の罰則は、第83条第1項に定められている。
一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金。
関連:ねずみは殺してはいけない?|鳥獣保護管理法が適用されない3種
ムクドリは狩猟鳥なのに、なぜ街なかでは駆除しないのか
ムクドリは狩猟鳥獣に指定されている。
環境省が選んだ46種類の狩猟鳥獣リストには、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラスなどが含まれている。
ただし、ひなと卵は狩猟鳥獣から除外されており、環境省は「狩猟鳥獣(46種、鳥類のひな及び卵を除く)」と明記している。
狩猟鳥だからといって、いつでもどこでも捕獲できるわけではない。制限は3つある。
1. 狩猟できる期間が決まっている
環境省によると、北海道以外の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までとなっている。
北海道は10月1日から翌年1月31日までだ。
猟区内では、さらに別の期間が定められている。
農林水産省の資料によると、ムクドリの繁殖期は4月から7月だ。家の戸袋で子育てをする時期は、狩猟期間とは重ならない。
2. 狩猟できる場所が決まっている
第11条では、鳥獣保護区や休猟区などを除いた区域で、狩猟期間に限って狩猟鳥獣の捕獲などが可能とされている。
3. 銃猟ができない場所と時間がある
第38条第1項は、こう決めている。
「日出前及び日没後においては、銃猟をしてはならない。」
第2項は、場所について決めている。
「住居が集合している地域又は広場、駅その他の多数の者の集合する場所(以下「住居集合地域等」という。)においては、銃猟をしてはならない。」
第3項では、弾丸が届く可能性のある建物などに向かって銃猟をしてはならないとしている。
条文には「駅」や「住居が集合している地域」という表現がある。
期間や場所の外で捕るには許可が要る
狩猟期間外や、狩猟が禁止されている区域、そしてひなや卵に対しては、狩猟で捕獲することはできない。これらを捕獲するには、第9条に基づく許可が必要になる。
狩猟期間外や禁止区域で狩猟鳥獣を捕獲した場合も、第83条第1項により罰則が定められている。
住居集合地域等での銃猟や、登録なしでの狩猟も同様で、同じ第83条第1項に入っている。
いずれも一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が科される。
ムクドリ駆除は市役所に頼めるか|市がすること・しないこと
市役所にムクドリの駆除を依頼できるかについて、各市のウェブサイトを確認する。
浦安市は、こう記載している。
「市では私有地内の巣の撤去は行えません。」
「自然界に生息するムクドリを飛来させなくすることはできません。」
西東京市も「市では撤去及び費用負担を実施しておりません。」としている。
市が個人宅のムクドリ駆除を行わない理由について、詳細な説明をした公的なページは、私は確認していません。
市がしている例
一方で、自治体が行っている取り組みについて記載しているページもある。
新潟市は、ムクドリの嫌がる音のCDを自治会などに貸し出している。
加古川市は、駅前の商店街に高周波音発生装置を置き、半年あまりの実証実験を行った。
他の市で同様の取り組みが行われているかについては、私は確認していません。
家の巣について、市役所に聞くこと4つ
自宅にムクドリの巣がある場合、市役所または都道府県の鳥獣担当部署に、以下の4点について問い合わせることができる。
- ムクドリの捕獲や卵の採取の許可は、市と県のどちらに申請するか
- 自分で申請できるか。業者に頼むなら、業者が申請するか
- 許可が出るまで何日かかるか
- ムクドリの巣の撤去(卵・ヒナがあるとき)は、許可の対象になるか
1(捕獲許可の申請先)は、自治体によって異なる。
兵庫県では、ムクドリの捕獲許可は市町長が発行し、申請窓口は「各市町担当窓口」となっている。
酒田市では、ムクドリの捕獲許可は市長が行う。
東京都の西東京市は、卵やヒナがいる巣の撤去には「東京都の鳥獣捕獲許可」が必要だと記載している。
2(申請者の条件)について、酒田市は申請者を「原則として、被害等を受けた者又は被害等を受けた者から依頼を受けた個人又は法人であって、狩猟免許を所持している者としています」と書いている。
3(処理期間)について、青森県では、第9条に基づく捕獲許可の標準処理期間を14日(県の休日を除く)としている。
他の都道府県の期間については、私は確認していません。
4(許可の審査基準)について、青森県の審査基準には、卵の採取を許可するケースの一つとして「建築物等の汚染を防止するため巣を除去する必要がある場合」が挙げられている。
家の戸袋や屋根裏からギャーギャー聞こえるとき|巣立ちまでの日数
「ギャーギャー」という鳴き声だけでムクドリだと断定することはできない。
ムクドリの鳴き声は資料によって記述が異なり、国土交通省 九州地方整備局の鳥図鑑では「キュルキュル、ギャーギャー」、農研機構の資料では「「キュルキュル」「ジャージャー」などといろいろな声を出す」と記されている。
戸袋や隙間から出入りする鳥を目で確認できた場合に、ムクドリだと判断できる。
関連:屋根裏に鳥|トトトトトと足音がするとき入口を外から探す今夜の手順
ムクドリは家に巣を作ることがある。
農研機構の資料には、巣の場所として「人家の戸袋など建物のちょっとしたすき間に」とある。
三鷹市によると、「都市化した場所では、しばらく使っていない部屋の雨戸の戸袋などに巣を作ることがよくあります。」とのことだ。
巣立ちまでの日数
農研機構の資料によれば、ムクドリは3月下旬から7月にかけて、年に1〜2回繁殖する。
一度の産卵で4〜7個の卵を産む。
「雌雄で抱卵し約 12 日でふ化、その後約 23 日で巣立つ。」
西東京市は、巣作りから約1か月から1か月半でヒナが巣立つと説明している。
農研機構の資料には、「巣立ちヒナはその後1ヶ月くらい親と行動を共にする。」とも書かれている。
卵やヒナがあるうちは手を出さない
西東京市は、巣にヒナや卵がある場合について、こう述べている。
「巣にヒナや卵がある場合、カラス、ドバト、ムクドリは鳥獣保護管理法により、市民による巣の撤去は東京都の鳥獣捕獲許可が必要になります。」
巣が空であれば、種類に関わらず誰でも撤去できると西東京市は説明している。
屋根裏から鳥を追い出す方法は、別の記事で説明している。
関連:屋根裏の鳥を追い出す方法|ガサガサが鳥のとき今夜やること
ムクドリを自分で追い払う限界と、業者に頼む目安
浦安市は、自宅のムクドリ対策について、こうアドバイスしている。
「ご自宅の被害を防止するためには、近づきたくないように追い払う対策を、各々がとる必要があります。」
ただし、追い払う行為が法律上の「捕獲等」に当たらないという条文や国の説明については、私は確認していません。
家でできるムクドリ対策として、浦安市は防鳥ネット、鳥用忌避剤、天敵の模型の3つを挙げている。防鳥ネットについては「軒下や戸袋などに張っておくと、鳥が侵入しにくくなる効果があります。」と書いている。忌避剤は、鳥が止まる所や入り込みやすい所にスプレーをかけたり固形物を置いたりするもの、天敵の模型は、カラスやフクロウ、タカなどの模型を置いて寄り付きにくくするものだ。
西東京市も野鳥の巣について、「ネットやミラーCD等、野鳥が寄り付かない対応が必要です。」としている。どの対策がどれだけ効くかを比べた公的な資料は、私は確認していません。
大きな音を出す機器の使用については、浦安市は「騒音問題となってしまいますので、自治会や地域間での合意が必要になります。」と注意を促している。
駅前や街路樹の群れ
駅前や街路樹で見られるムクドリの群れは、時期によって大きさが変わる。
農研機構の資料によると、夏のねぐらは6月末頃の繁殖終了後から形成され始め、数百羽から時には数万羽の規模になる。
夏のねぐらは10月半ば頃にはなくなり、その後現れる冬のねぐらの群れは、数百から数千羽程度だ。
農林水産省の資料では、「近年では1年中ねぐらが作られる地域もある。」と記されている。
街路樹の群れに関する相談窓口については、私は確認していません。
自分でできることと、許可が要ること
浦安市と西東京市のページで、個人でできる対策として挙げられているのは、追い払いの対策(浦安市)と、空の巣の撤去(西東京市)だ。
許可が必要となるのは、以下のいずれかに該当する場合だ。
- ムクドリを捕まえる、傷つける
- 卵を取る、割る
- 卵やヒナのある巣を撤去する
業者に頼む目安
次のどれかに当たるなら、自分で進めないほうがいい。
- 巣に卵やヒナがある
- 巣が戸袋の奥や屋根裏にあって、手が届かない
- 屋根や高い所での作業が要る
浦安市は、卵やヒナがいる場合について、こう述べている。
「すでに卵や幼鳥がいる場合は、捕獲などの許可を受けた事業者などで作業を行う必要があります。」
業者に依頼する際は、許可を受けているか、誰が許可申請を行うのかを確認しておくと良いだろう。
業者に依頼した場合の費用については、私は確認していません。
国民生活センターは2024年4月24日、害虫・害獣駆除サービスについて、インターネットで見つけた格安料金の業者に来てもらうと、ネットの表示とかけ離れた高額料金を提示される相談事例が多いと公表している。ページに載っている5つの事例はゴキブリ・ハチ・ネズミ・コウモリのもので、ムクドリの事例は入っていない。
同じ資料のアドバイスには「極端に安い価格を表示するサイトや広告には注意。」「複数見積もりを取って比較・検討する時間を与えない事業者とは契約しない。」とある。料金がおかしいと思ったときの相談先として、消費者ホットライン「188」が書かれている。
戸袋や屋根裏に出入りしているのが鳥かどうか見分けられないときは、コウモリの場合の確かめ方をコウモリが屋根裏にいるのに音がしない|パタパタが無い理由と今夜の確認にまとめている。
まとめ|ムクドリをなぜ駆除しないか、今夜やること
ムクドリをなぜ駆除しないのか。鳥獣保護管理法により、捕獲や殺傷には原則として許可が必要だからだ。
ムクドリは狩猟鳥だが、狩猟期間は北海道以外で11月15日から翌年2月15日までとなっており、駅前や住居が集合している地域での銃猟は禁じられている。また、ひなや卵は狩猟鳥獣の対象外だ。
無許可で捕獲などを行うと、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が科される。
私有地の巣は市では撤去しないと書いている自治体があるが、その理由を具体的に説明した公的ページは、私は確認していません。
今夜できることとして、以下の3点が挙げられる。
- 戸袋やすき間から出入りする鳥を見て、ムクドリかを確かめる
- 巣に卵やヒナがあるかを見る。あれば手を出さない
- 市役所か県の鳥獣の担当に、許可の申請先と日数を聞く
卵やヒナがいる場合は、巣立ちを待つか、許可を得た業者に依頼する。農研機構の資料によると、約12日でふ化し、その後約23日で巣立つ。
この記事で引用した資料
(2026年10月17日に確認)
- 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 第8条・第9条・第11条・第38条・第83条(e-Gov 法令検索)ページ
- 環境省「狩猟制度の概要」ページ
- 環境省「捕獲許可制度の概要」ページ
- 農林水産省「2-2-5 ムクドリ」(PDF)ページ
- 農研機構「鳥種別生態と防除の概要:ムクドリ」Ver.3.3(PDF)ページ
- 国土交通省 九州地方整備局のドメイン「ムクドリ(山国川の鳥図鑑)」ページ
- 西東京市「野鳥」ページ
- 浦安市「ムクドリやカラスなどの鳥獣について」ページ
- 三鷹市「ムクドリ(椋鳥)ムクドリ科」ページ
- 新潟市「ムクドリによる生活環境被害」ページ
- 加古川市「ムクドリ撃退高周波音大作戦(2024)」ページ
- 酒田市「有害鳥獣の捕獲には許可が必要です」ページ
- 兵庫県「鳥獣の捕獲許可について」ページ
- 青森県「申請に対する処分に関する審査基準・標準処理期間」ページ
- 国民生活センター「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意」(2026年10月20日に確認)ページ
竹内 亮太(たけうち りょうた)
家で聞こえる音の正体を絞り込んで、次に何をすればいいかまで決められるようにするために、
このサイトを書いている。
害獣の駆除業者ではないし、自分の家に何かが出たこともない。だから体験談は書かない。
やっているのは、公的機関の資料を1件ずつ開いて、書いてあることと書いていないことを分けることだ。
音だけで正体は断定しない。
どこまで分かって、どこから先は天井裏に上がらないと分からないのかを分けて書く。

