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ハクビシンは壁を登るのか。外壁は平らで、登る場所もないはずなのに、屋根裏から音が聞こえることがある。
この疑問について、公的な資料でも情報が食い違っている。酒田市のウェブサイトには「垂直な外壁を登ることはできません」と書いてある。一方、東京都北区のウェブサイトでは「柱や壁、雨どいなども登る」と書かれている。
この記事では、どちらの説が正しいかは断定しない。平らな外壁、壁の中の隙間、雨どいや庭木について、資料に書かれていることと書かれていないことを整理する。その上で、今夜、家の外壁や屋根の周りで確認できることを挙げる。
ハクビシンは壁を登るか:公的資料で言い方がちがう
酒田市は「垂直な外壁を登ることはできません」
酒田市の「ハクビシンにご注意ください」というページ(2023年5月20日更新)には、こう書かれている。
「ハクビシンは垂直な外壁を登ることはできません。屋根に登る手段として多いのは、庭木などから飛び移る方法です。家屋に接した庭木は剪定などを行い、屋根に移れないようにすることをお勧めします。」
このページは、農林水産省の資料(平成20年3月)を参考にしたと明記している。ただし、その出典表示があるのは「ハクビシンの生態」という項目だけだ。「垂直な外壁を登ることはできません」という文は「被害対策」という項目にあり、出典の記載はない。
北区は「柱や壁、雨どいなども登る」
東京都北区の「アライグマ・ハクビシンの被害を防ぐために」(2026年10月22日更新)では、ハクビシンの行動についてこう書かれている。
「木登りが得意で、柱や壁、雨どいなども登る。電線の上を歩くこともできる」
このページの出典は、農林水産省の「野生鳥獣被害防止マニュアル」と環境省の「アライグマ防除の手引き」だ。
農水省の中型獣類編は「雨樋のような」柱を登ると書く
農林水産省の『野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】』(令和6年3月)には、登り方について書かれている。
「爪は小さいため、柱などを登る際には爪を引っ掛けて登らずに、分厚い肉球を押し付けて挟むように上り下りする(写真2-2-4、2-2-5)。そのため、雨樋のようなツルツルした素材の柱でも登ることができる。」
ここで説明されているのは、「柱など」を挟んで登る方法だ。平らな壁を登れるかどうかについては、このページには書かれていない。
外壁や壁を登れるかを書いた資料は2件
外壁や壁を登れるかについて書いている資料は、今回確認した公的資料のうち2件だけだった。登れないと書いているのは酒田市(「垂直な外壁」)、登ると書いているのは東京都北区(「柱や壁」。外壁か、平らな壁かは書いていない)だ。それ以外の資料には、外壁や壁を登れるかどうかは記載されていなかった(農水省の平成20年版は一部ページしか確認していない)。
サイディング、モルタル、タイルなど、外壁の素材によって登りやすさが変わるかどうかは、私は確認していません。
壁の中の隙間は登る:論文の9〜17cmと、家の壁の8〜11cm
2枚の板の隙間で登った幅
外壁とは別に、壁の中の隙間についても触れるべき点がある。加瀬ちひろさんたちの論文「ハクビシンは垂直な隙間を登る : 登れる幅および登り方の変化」(日本家畜管理学会誌、2012年)の抄録に、実験結果がまとめられている。
実験では、2枚の板で垂直な隙間を作って検証した。抄録によると、結果は以下の通りだ。
「実験の結果、ハクビシンは4種類の登り方で背中と四肢で板を押しながら、幅6cmから25cmの垂直な隙間を登った。」
「登るまでの潜時および報酬までの到達時間は、隙間幅8cm以下および18cm以上で長くなったことから、ハクビシンは幅9〜17cmの隙間を比較的容易に登る可能性が示された。」
抄録によれば、隙間の幅が12cm以上になると、隙間の中で体を支えるのが難しくなるという。
家の壁の中が通り道になりうる理由
抄録では、一般的な日本家屋の壁の内部の幅についても言及している。
「多くの日本家屋の壁体内は幅8〜11cmであることから、ハクビシンは壁内部の垂直な隙間を経路として利用し、家屋内を自在に移動できることが示された。」
ここで示された「9〜17cm」という登りやすい隙間の幅と、「8〜11cm」という日本家屋の壁内の幅には重なりがある。つまり、壁の中の隙間は、ハクビシンが移動する経路になりうるということだ。これは2枚の板に挟まれた隙間での実験結果であり、1枚の平らな外壁での実験ではない。
酒田市のウェブサイトにも、壁の中を通る侵入経路について書かれている。基礎コンクリートの通風口について、「ここから侵入して、壁の内を通って天井裏に棲みついてしまうことがあります。」と注意を促している。
つまり、外壁を登らなくても、建物の下の通風口から入って、壁の中を上がっていくルートがあるわけだ。
ハクビシンが外壁から屋根へ上がる道:庭木・雨どい・電線・柱
登り口としての庭木
庭木から屋根へ移る経路については、3件の公的資料で言及されている。
酒田市は「屋根に登る手段として多いのは、庭木などから飛び移る方法です。」と書いている。東京都北区は「庭木をつたって天井裏に侵入することがあります。屋根へ伸びる庭木の枝はこまめに切りましょう」とアドバイスしている。東京都環境局も同様に、「家屋への侵入経路となるような木の枝等は切る」と述べている。
木の枝が屋根や外壁に近づいていないか確認する。庭の果樹にハクビシンが来ないようにする方法は、ハクビシンを寄せ付けない方法|庭のぶどう・果樹と家で今夜することにまとめてある。
雨どい・柱・電線
雨どいについては、北区の資料と農水省の中型獣類編の両方で触れられている。北区では「雨どいなども登る」、中型獣類編では「雨樋のようなツルツルした素材の柱でも登ることができる」とある。
電線も、農水省の資料2件と北区の資料に出てくる。農水省の『野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-』(平成20年3月)にはこうある。
「足でものをつかむことができるため、電線の上を尾でバランスをとりながら渡り、移動することができる。」
同じ資料には、飼育されているハクビシンについて「高さにして約 110cm までジャンプすることができる」とも書かれている。
配管と建物のカド
エアコンの配管のような管や、建物のカド(出隅)を登れるかについての記述は、開いた公的資料には見当たらなかった。配管や建物のカドを登るかどうかは、私は確認していません。
入り口になる穴と大きさ
ハクビシンが侵入する経路は、登る場所とは別に「穴」もある。酒田市は「ハクビシンは頭が入るところであれば侵入してきます。」として、主な侵入口に「基礎コンクリートの通風口」「朽ちた外壁などの穴」「屋根と屋根が重なっている奥に開いた空間」「増築をした接続部分にできた空間」を挙げている。
穴の大きさについて、農水省の中型獣類編には「6cm×12cmの隙間があれば侵入でき」とある。北区はこう説明している。
「ハクビシンは、小さな隙間(直方形であれば8cm四方又は6cm×12cmの穴、円であれば直径10cmの穴程度)があれば侵入できます。」
外壁と屋根まわりで、今夜確かめること
建物のまわりを下から上へ見る
酒田市は「まず、建物周りを下から上まで細かくチェックすることが必要です。」とアドバイスしている。
チェックする順番は、資料に出てきた「登る場所」と「穴」に沿って確認するのが良い。
- 基礎の通風口に、破れや外れが無いか
- 外壁に、朽ちた所や穴が無いか
- 雨どいや柱が、屋根の近くまで続いていないか
- 屋根や外壁に、枝が届いている庭木が無いか
- 屋根の重なりや、増築の継ぎ目に隙間が無いか
北区では、侵入できそうな隙間や破損を見つけたら「金網などでふさぎましょう」と提案している。
白い粉で足跡を見る
ただし、穴が見つかっても、それが必ずしもハクビシンに使われているとは限らない。酒田市はこの点について、次のように述べている。
「穴の下の地面一面に石灰などの白い粉をまいて、粉に足跡が残れば、侵入口となっていることを確認することができます。」
酒田市はハクビシンを「完全な夜行性、木登りが得意」と書いている。だから、夕方に粉をまいて、次の日の朝に足跡を確認する。
音だけで正体を決めない
ただ、屋根裏で音がするだけでは、ハクビシンだと断定はできない。タヌキなどほかの動物と見分ける方法は、ハクビシンの親子かタヌキか|屋根裏の正体の見分け方と屋根裏に何かいる|音と鳴き声で正体をどこまで絞れるかにまとめてある。
自分でできることの限界と、業者に頼む目安
捕獲には許可が要る
酒田市は「捕獲を行う場合は、県知事の許可が必要です」と書いている。でも、「住宅等の建物内及びその敷地内で捕獲を行う場合は、狩猟免許がない方でも許可を受けることができます」とある。なお、「市では、ハクビシンの駆除を行っていません。」とも書いている。
北区も「野生の鳥獣(哺乳類、鳥類)を捕獲するには、鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可が必要となります。」と書いている。
自分で駆除できない理由については、ドタドタがハクビシンならなぜ自分で駆除できない?資格と今夜することで詳しく説明した。
塞ぐ前に知っておくこと
農林水産省の中型獣類編では、ハクビシンが家をどう利用するかについて、こう書かれている。
「ねぐらや出産・子育ての場として、家屋を利用する場合があり、その際に発生する騒音(足音や子の鳴き声)や排泄物による汚染などが家屋侵入被害として報告されている」
同じ資料によると、ハクビシンが出産する時期は、3月〜11月と推定されている。
中にハクビシンがいるかどうか確認しないまま穴をふさいでしまうとどうなるか、そして、どこからふさいでいくべきかについては、私は確認していません。
業者に頼む目安
次のどれかに当てはまるときが、自分で穴をふさぐ前に、一度業者に見てもらう目安だ。
- 侵入口が屋根の重なりや増築の継ぎ目など、高い所にある
- 白い粉に足跡が残り、穴が使われていると分かった
- 屋根裏から足音が続き、中にいるかどうかが分からない
もしハクビシンに入られたら、まず何から始めればいいのか、これも屋根裏のドタドタ、ハクビシン駆除は何から?順番と今夜することにまとめた。
侵入口が高い所にあるときや、中にいるかどうかが分からないときに、ハクビシンの現地調査と見積もりを無料で頼めるか、害獣プロガードの公式ページで対応エリアと合わせて確かめる
※見積もりと相談に対応している地域:東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、三重、大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山
まとめ
- 外壁や壁を登るかは、公的資料で言い方が分かれる。酒田市は「垂直な外壁を登ることはできません」、北区は「柱や壁、雨どいなども登る」
- 農水省の中型獣類編は「雨樋のようなツルツルした素材の柱でも登ることができる」と書く
- 論文の抄録によると、2枚の板の隙間は幅9〜17cmで比較的容易に登る可能性がある。多くの日本家屋の壁の中は幅8〜11cm
- 上がる道として資料に出てくるのは、庭木・雨どい・柱・電線。配管と建物のカドは私は確認していません
- 侵入できる隙間は6cm×12cm(農水省の中型獣類編・北区)
- 今夜は建物のまわりを下から上へ見て、穴の下に白い粉をまく
- 捕獲には許可が要る(酒田市・北区)
外壁と屋根まわりを見ても上がり口や穴の場所が分からないときは、ハクビシンの現地調査と見積もりの対応エリアを害獣プロガードの公式ページで先に確かめる
※見積もりと相談に対応している地域:東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、三重、大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山
資料(すべて 2026-10-28 に確認)
- 酒田市「ハクビシンにご注意ください」 https://www.city.sakata.lg.jp/kurashi/doubutsu/yasei/hakubishin.html
- 東京都北区「アライグマ・ハクビシンの被害を防ぐために」 https://www.city.kita.lg.jp/living/animal/1018222/1010053.html
- 農林水産省『野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】』令和6年3月 2-2 ハクビシン https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/R5_tyuugata/r5_tyuugata_2_2.pdf
- 農林水産省『野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-』平成20年3月版 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/attach/pdf/6_old_manual-15.pdf
- 東京都環境局「被害を防ぐために」 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/raccoon/prevention
- 加瀬ちひろ・江口祐輔・古谷益朗・植竹勝治・田中智夫「ハクビシンは垂直な隙間を登る : 登れる幅および登り方の変化」日本家畜管理学会誌 48巻3号 p.95-102(2012) https://doi.org/10.20652/abm.48.3_95
竹内 亮太(たけうち りょうた)
家で聞こえる音の正体を絞り込んで、次に何をすればいいかまで決められるようにするために、
このサイトを書いている。
害獣の駆除業者ではないし、自分の家に何かが出たこともない。だから体験談は書かない。
やっているのは、公的機関の資料を1件ずつ開いて、書いてあることと書いていないことを分けることだ。
音だけで正体は断定しない。
どこまで分かって、どこから先は天井裏に上がらないと分からないのかを分けて書く。

