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火災保険でネズミ駆除の費用が出るかどうかを調べるには、駆除作業と壊れた部分の修理を別々に考える必要がある。どこまで補償されるかは、契約内容や約款の記載次第で、最終的には保険会社が決めることになる。だから、「必ず出る」とも「使えない」とも断言はできない。ハクビシンの被害も、考え方は同じだ。
今夜できるのは、まず保険証券を探し、被害箇所を写真に撮り、保険会社に何を聞くべきかをリストアップしておくところまでだ。保険金を請求する権利は、保険法によると3年で時効になる。
火災保険でネズミ駆除の費用は出るか|駆除と修理を分けて考える
ネズミやハクビシンの被害でかかる費用は、大きく3つに分けられる。
1つ目は駆除作業そのものにかかる費用、2つ目は侵入口を塞ぐための費用、そして3つ目は、かじられたり汚れたりした箇所の修理費用だ。
どの事故が補償の対象になるかは、約款や証券で確認できる。例えば、東京海上日動の「住まいの保険」の約款では、事故を火災、風災、水災、盗難・水濡れ等、破損等に分類している。補償するのは「保険証券の『補償の内容』欄に『○』を付した事故」だ。
契約によっては、破損等に○が付いていない場合もある。知恵袋には、自分の契約の補償項目を並べ、破損等に✕を付けた上で、軒下の穴がどの項目に該当するかを尋ねている質問もある。
駆除作業の費用はどうだろうか。東京海上日動の約款には、損害保険金とは別に「費用保険金」の一覧がある。そこには修理付帯、損害拡大防止、請求権の保全、失火見舞、水道管凍結修理、地震火災の費用が並んでいるが、駆除の文字は無い。
駆除作業そのものの費用を支払うと明記した条項を、私は確認していません。他の特約も私は確認していません。駆除費用が対象になるかどうかは、特約も含めて保険会社に直接確認するしかない。
ネズミのかじり・ハクビシンの糞尿と、約款の「ねずみ食い」「破損・汚損」
約款には「ねずみ食い」という言葉が出てくる。これは、保険金を支払わないケースについて説明されている箇所だ。
東京海上日動「住まいの保険」の第5条には、「保険金をお支払いしない場合」という項目がある。その冒頭には、「当会社は、下表のいずれかに該当する事由によって生じた損害または下表のいずれかに該当する損害に対しては、保険金を支払いません。」と記載されている。
表の⑫には、「保険の対象に次の事由に起因して、その事由が生じた部分に発生した損害」とあり、その中に「ねずみ食いまたは虫食い等」が含まれている。同じ⑫には、自然の消耗または劣化、さび、かび、腐敗なども並んでいる。
この⑫には「その事由が生じた部分」とあるので、かじられた部分そのものの損害は、保険金が支払われない損害に入っている。
損保ジャパンの資料にも同様の記載がある。これは「特約火災保険」のご契約のしおり(2022年10月版)で、住宅金融支援機構の融資を受けた住宅などに向けた特約火災保険であり、ふつうに売られている火災保険の約款ではない。この特約の第3条(保険金を支払わない場合)⑶の③には、「ねずみ食い、虫食い等」と書かれている。
この2社の、それぞれの商品の約款では、「ねずみ食い」は保険金が支払われないケースとして挙げられている。全社・全商品がそうかは、私は確認していません。
次に、破損・汚損の補償を見る。東京海上日動の約款では、破損等は「(1)①から⑧以外の不測かつ突発的な事故によって保険の対象について生じた損害をいいます」と定義されている。
損保ジャパンの特約火災保険には、「破損・汚損損害等補償特約」というものがある。これは、「不測かつ突発的な事故によって保険の対象について生じた損害」に対して損害保険金を支払うものだ。
ただし、この特約でも、「ねずみ食い、虫食い等」は除外される。補償されるのは、損害額から「保険証券記載の免責金額を差し引いた残額」となる。
ハクビシンの糞尿による被害はどうだろうか。東京海上日動の第5条の表⑬には、「すり傷、かき傷、塗料の剝がれ落ち、落書き、ゆがみ、たわみ、へこみその他単なる外観上の損傷または保険の対象の汚損であって、保険の対象ごとに、その保険の対象が有する機能の喪失または低下を伴わない損害」は保険金が支払われないと記載されている。
ハクビシンの糞尿による汚れや傷みを具体的に名指ししている条項を、私は確認していません。糞尿による被害がどの補償に当たるかは、保険会社に確認する必要がある。
ネズミが原因の火災・漏電は火災保険の「火災」になるか
知恵袋には、最近ネズミが家に出るようになり、駆除業者のサイトで「火事の原因になる」と読んで心配になった、という質問がある。自分の約款を見たが、字が細かくて該当する記載が見つけられなかったという。
火災については、東京海上日動の約款では事故の種類の1つ目として「火災、落雷または破裂もしくは爆発」が挙げられている。損保ジャパンの特約火災保険でも、第2条の最初に「火災」がある。
ネズミが原因で火災が起きた場合を名指しで書いた条項を、私は確認していません。
損保ジャパンの特約火災保険では、保険金が支払われない場合の条項に注釈がある。「前条の事故が生じた場合は、①から③までのいずれかに該当する損害に限ります。」前条というのは、火災や落雷、物体の落下・飛来・衝突などの事故に関する条項だ。つまり、火災などが起きた場合でも、保険金が支払われないのは、①から③(保険の対象の欠陥、自然の消耗もしくは劣化、ねずみ食い・虫食い等)に該当する損害に限られる、という書き方になっている。
東京海上日動の約款で、かじられたことから起きた他の事故がどのように扱われるかは、私は確認していません。ネズミが原因で火災が発生した場合の扱いは、契約している約款と保険会社の判断によって決まる。
電気の故障についても見ておく。損保ジャパンの破損・汚損損害等補償特約では、「不測かつ突発的な外来の事故に直接起因しない保険の対象の電気的事故または機械的事故によって生じた損害」は支払われないとしている。東京海上日動の約款に同様の条項があるかは、私は確認していません。
建物と家財|かじられた電気コードや家電はどちらで見るか
東京海上日動の約款では、建物と家財は保険の対象として区別されている。
この約款の第2条では、被保険者が所有する以下のものが、特別の約定がないかぎり建物に含まれるとされている。その一つが、「電気、通信、ガス、給排水、衛生、消火、冷房、暖房、エレベーター、リフト等の設備のうち建物に付加したもの」だ。畳や建具、建物に設置した浴槽や流し、棚、門や塀、物置や車庫、建物の基礎なども建物に含まれる。
家具などの動産は、「家財補償特約」を付けることで保険の対象となる。この特約では「家財とは生活の用に供する家具、衣服その他の生活に必要な動産をいいます」と定めている。
この約款の記載からすると、建物に設置された電気設備は建物の一部とみなされ、家具などの動産は、家財補償特約を付けていれば家財として扱われることになる。
家電の1つ1つがどちらに入るかを名指しした条を、私は確認していません。火災保険には、建物だけを対象にしたものと、家財も対象にしたものがある。どちらの契約か、証券で確認しておく。
賃貸で被害に遭ったとき|誰の火災保険を見るか
日本損害保険協会は、賃貸で契約する火災保険について、「建物の持ち主である大家さんが契約している建物の火災保険ではなく、家財の火災保険になります」と書いている。
同じページには「アパートなどの賃貸住宅では、借りた部屋は元の状態に戻して返す義務があります」ともある。「借家人賠償責任保険」に加入しておくと、部屋に損害を与えた場合の修理費用が補償される、という説明もある。
建物は大家さんの火災保険、自分の家財は自分の家財の火災保険だ。賃貸でネズミやハクビシンによる被害が出た際に、どの保険が使えるのかを正面から書いた公的な資料を、私は確認していません。まずは管理会社か大家さんに連絡する。
火災保険を使う前に今夜できること|証券を出す・写真を撮る・聞くことを書く
1つ目は、保険証券を見て、「補償の内容」欄のどこに○が付いているかを確認すること。建物だけか、家財も含まれているか、免責金額もチェックする。
2つ目は、被害を受けた場所を写真に撮っておくこと。かじられた跡や汚れた場所、侵入口になりそうな場所などを記録しておく。
3つ目は、保険会社か代理店に連絡すること。保険法の第14条には、こう書いてある。「保険契約者又は被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。」
連絡する前に、保険会社に聞きたいことをまとめておく。
- 被害はどの補償の項目に当たるか
- 駆除の作業の費用は対象になるか
- 入り口をふさぐ費用と、修理の費用は対象になるか
- 免責金額はいくらか
- 請求の期限はいつまでか
保険金の請求期限は、保険法の第95条1項で定められている。保険給付を請求する権利は「これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する」。
約款にも同じ3年の記載がある。東京海上日動の約款では「保険金請求権は、第4節第1条(保険金の請求)(1)に規定する時の翌日から起算して3年を経過した場合は、時効によって消滅します」。
「保険で直せる」と言われたとき|申請代行と業者の契約前に確かめること
日本損害保険協会は、住宅修理業者とのトラブルに注意を促している。「住宅修理などに関し、『保険が使える』と言って勧誘する業者とのトラブルが増加しています。…住宅の修理を業者と契約する前に、ご契約している損害保険会社または損害保険代理店へご相談ください。」
損保協会のページによると、住宅修理に保険金が使えると言って勧誘された事例の相談は、2010年度からの合計で11,261件(2020年8月時点)だ。国民生活センターの情報として載っている数字だ。
同じページには、保険会社や代理店に連絡する前に業者と契約してしまい、保険金が支払われず自己負担になったり、高い解約手数料を求められたりしたトラブルも載っている。
損保協会のページには「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害はお支払いの対象とはなりません。」ともある。
国民生活センターも2021年9月2日に注意喚起を出した。題は「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!-申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!!-」だ。
アドバイスでは「申請サポート会社に頼らずとも、保険金の請求は加入者自身で行えます」と書き、「請求期限が迫っている等の勧誘やインターネット広告をうのみにせず、安易に契約しないようにしましょう」と呼びかけている。事例1は、「火災保険の請求期限が迫っている」と勧誘された相談だ(2021年5月受付)。
申請サポートの手数料は、損保協会の事例で「保険金の30%」、国民生活センターの事例2で「手数料は40%」だ。これはあくまで事例の中の数字で、相場ではない。
困ったときの相談先は3つある。
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」番
- 損保協会「保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル」0120-309-444(月〜金の9〜12時・13〜17時。祝日・当協会の休業日を除く)
- そんぽADRセンター 03-4332-5241(全国共通。月〜金の9:15〜17:00。祝日・休日・12/30〜1/4は除く)
駆除料金に関するトラブルについては、国民生活センターが2024年4月24日に注意喚起を出している。駆除の見積もりや契約の前に確認すべきことは、害獣駆除の費用の記事にまとめた。自治体の補助や雑損控除で費用が軽くなるかも、そちらで見られる。
自分でできることの限界と、業者に頼む目安
自分でできるのは、保険証券と約款を確認すること、被害状況を写真に撮ること、そして保険会社に連絡することまでだ。保険が適用されるかどうかを決めるのは、業者でも自分でもなく、保険会社だ。
ハクビシンについては、捕獲する前に自治体に相談する。東京都環境局のページには「区市町は、東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画に基づき、アライグマ・ハクビシンの捕獲を実施しています」とある。「被害にあった場合、まずは各区市町の環境部署や清掃部署等にお問い合わせ下さい」ともある。
ハクビシンは鳥獣保護管理法の施行規則で狩猟鳥獣に入っている。狩猟期間外や免許なしで捕獲するなら、許可が要る。詳しくはハクビシンを勝手に捕まえられない理由の記事にある。駆除の進め方はハクビシン駆除の記事で見られる。
ネズミの扱いはハクビシンと異なる。ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種には鳥獣保護管理法は適用されない(施行規則 第78条1項)。屋根裏のネズミについては屋根裏のネズミの記事にある。
業者に捕獲や侵入口の封鎖を依頼する場合、まず保険を使うかどうかを決める。保険を使うなら、損保協会の注意のとおり、業者と契約する前に保険会社か代理店に相談する。
ネズミやハクビシンの捕獲・侵入口の封鎖を業者に相談するなら、害獣プロガードの公式ページで対応エリアと現地調査・見積もりの扱いを先に確かめる
※見積もりと相談に対応している地域:東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、三重、大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山
キツツキの穴と火災保険|鳥の被害はネズミ・ハクビシンと別に考える
知恵袋には、キツツキと思われる鳥が軒下に穴を開けたという質問がある。質問者は、自分の火災保険の補償項目(火災・風災・水災・盗難水濡れ等で、破損等は無い)を並べ、どの項目に該当するか尋ねている。
キツツキは鳥なので、ネズミやハクビシンとは法律の扱いが違う。鳥獣保護管理法で保護されており、捕獲や傷つける行為は原則禁止されている。同法の第8条には「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等…をしてはならない。」とある。
環境省によると、被害が出ている場合などは、環境大臣か都道府県知事の許可を受けて捕獲等ができる。多くの都道府県では、この権限の一部を市町村長に移譲している。
キツツキの仲間(きつつき科)は、施行規則の狩猟鳥獣の一覧(別表第二)には載っていない。捕獲したり、追い払うために傷つけたりする前に、自治体に相談する。
キツツキの穴が保険のどの項目に該当するかは、契約内容によって違う。保険会社か代理店に確認する。穴の修理は、外装や屋根の工事の範囲となる。
まとめ|火災保険とネズミ駆除で確かめる順番
- 保険証券の「補償の内容」欄で、どの事故に○があるかを見る
- 駆除の作業の費用と、修理の費用を分けて考える
- 東京海上日動と損保ジャパン(住宅金融支援機構の融資住宅向けの特約火災保険)の約款では、「ねずみ食い」は保険金を支払わない側に入っている
- 被害の場所を写真に撮り、保険会社か代理店に連絡する(保険法 第14条「遅滞なく」)
- 保険金を請求する権利は、保険法では3年で時効になる
- 「保険で直せる」と言われたら、業者と契約する前に保険会社か代理店に相談する。困ったら188
- ハクビシンは区市町の窓口に聞く。キツツキは鳥なので、捕まえる前に自治体に聞く
自治体の補助や雑損控除については、害獣駆除の費用の記事にまとめた。
この記事で見た資料
調べた日:2026年10月22日(2026年10月23日に開き直した)
- e-Gov 法令検索(保険法) https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056
- 東京海上日動(「住まいの保険」ご契約のしおり〔約款〕2024年10月1日版) https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/service/pdf/sumai_yakkan_241001.pdf
- 損保ジャパン(「特約火災保険」ご契約のしおり 2022年10月版) https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/kinsurance/yakkan/tokuyakukasai_yakkan2210.pdf
- 日本損害保険協会(住宅の修理などに関するトラブルにご注意) https://www.sonpo.or.jp/news/caution/syuri.html
- 日本損害保険協会(そんぽのホント point6) https://www.sonpo.or.jp/wakaru/seminar/koredake/point6.html
- 国民生活センター(2021年9月2日 公表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210902_2.html
- 国民生活センター(2024年4月24日 公表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240424_1.html
- 環境省(捕獲許可制度の概要) https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/capture1.html
- e-Gov 法令検索(鳥獣保護管理法) https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000088
- e-Gov 法令検索(鳥獣保護管理法施行規則) https://laws.e-gov.go.jp/law/414M60001000028
- 東京都環境局(アライグマ・ハクビシン対策について) https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/raccoon
- 東京都環境局(被害を防ぐために) https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/raccoon/prevention
- Yahoo!知恵袋(ネズミと火災保険の約款についての質問) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12217917542
- Yahoo!知恵袋(軒下のキツツキの穴と火災保険についての質問) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12238763337
竹内 亮太(たけうち りょうた)
家で聞こえる音の正体を絞り込んで、次に何をすればいいかまで決められるようにするために、
このサイトを書いている。
害獣の駆除業者ではないし、自分の家に何かが出たこともない。だから体験談は書かない。
やっているのは、公的機関の資料を1件ずつ開いて、書いてあることと書いていないことを分けることだ。
音だけで正体は断定しない。
どこまで分かって、どこから先は天井裏に上がらないと分からないのかを分けて書く。

