屋根裏のムササビ|ハクビシンとの見分け方と今夜すること

屋根裏から音がして、ムササビかなと思ったとき、まず2つのことを決めないといけない。屋根裏にいるのが本当にムササビなのか、そして自分で追い出したり捕まえたりしていいのか、ということだ。

ムササビは野生の哺乳類で、鳥獣保護管理法の対象になっている。勝手に捕まえると罰せられる。それに、屋根裏の音だけでは、ムササビなのかハクビシンやネズミなのかは分からない。この記事では、公的機関と法令に書いてあることと書いていないことを整理して、今夜からできることを紹介する。

屋根裏のムササビは鳥ではない|リスの仲間

ムササビは滑空する動物だが、鳥ではない。

鳥獣保護管理法の施行規則を見ると、ムササビ(学名:Petaurista leucogenys)は「哺乳綱」「ねずみ目」「りす科」に分類されている(e-Gov 施行規則 第二十五条・第二十七条の表)。

愛媛県立とべ動物園の「動物なんでもQ&A」に、「ムササビが屋根裏に入ってきて夜になったら騒いで困ります。どうすればいいのでしょうか?」という質問があった。動物園の回答はこうだ。

「屋根裏に巣を作り繁殖します。出入り口を見つけ、ムササビを追い出してから蓋をしてください。」

動物園の回答によれば、ムササビは屋根裏に入り込み、そこで子育てをすることがある。

ムササビか、ハクビシン・ネズミか|屋根裏の音だけでは決まらない

屋根裏の音だけでは、ムササビとハクビシンとネズミを見分けることはできない。

音の種類で動物を判断するような公的な表は、私は確認していません。ムササビの足音や鳴き声とハクビシンを比べた公的な資料も、私は確認していません。

見分けるには、姿を見ることが一番だ。屋根裏から出てくる動物を外から観察するか、専門業者や自治体に調べてもらう必要がある。

もしハクビシンだった場合は、話は変わってくる。東京都環境局は、ハクビシンを外来生物として挙げている。また、ネズミのうちドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミは鳥獣保護管理法の対象外となっている(施行規則 第七十八条)。どの動物かによって、できることが変わってくるのだ。

屋根裏の音で正体をどこまで絞れるかは「屋根裏に何かいる|音と鳴き声で正体をどこまで絞れるか」に、ハクビシン・タヌキ・テンの見分けは「ハクビシンの親子かタヌキか|屋根裏の正体の見分け方」に書いた。

屋根裏の出入り口を、外から探す

とべ動物園の回答は「出入り口を見つけ」から始まっている。今夜できることとしては、屋根裏の出入り口がどこにあるかを家の外から探すことだ。

ムササビが何時ごろ外に出るのか、具体的な時間については、私は確認していません。出入り口の大きさの具体的な数値も、私は確認していません。

動物園は、木の枝についてもアドバイスしている。

「屋根から飛び移れる位置にある木の枝は切って、ムササビの通り道をなくしてください。」

家の近くに、屋根まで届くような木があるか、明るいうちに確認しておくと良いだろう。

夜の行動については、学術論文に記録がある。東京都八王子市にある巣箱3個を2010年2月から2014年5月まで録画した調査によると、巣箱は「昼間だけでなく、夜間、多様な目的で年間を通じて頻繁に利用」されていた(繁田ほか・森林野生動物研究会誌 46巻・2021)。ただし、これは巣箱での調査であり、屋根裏での調査ではない。

屋根裏のムササビを自分で捕まえてよいか|鳥獣保護管理法の線

許可なくムササビを捕まえることはできない。

鳥獣保護管理法第二条に、「この法律において「鳥獣」とは、鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう。」とある。ムササビは哺乳類なので、「鳥獣」に含まれる。

第八条では、鳥獣の捕獲等を原則として禁止している。例外として、第九条の許可、第十一条の狩猟、第十三条に該当する場合が挙げられている。

ムササビは狩猟鳥獣ではない。施行規則第三条の別表第二を見ると、りす科で狩猟鳥獣となっているのはタイワンリスとシマリスの2種だけだ。そのため、ムササビを捕獲するには第九条の許可が必要になる。

許可なく捕獲等を行った場合の罰則は、第八十三条第一項第一号に定められており、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が科される。

捕獲の許可は、原則として都道府県知事が出す(第九条第一項)。環境省によれば、多くの都道府県で、捕獲許可の権限の一部が市町村長に移譲されている。

追い出すことや、出入り口をふさぐことが、法律上の「捕獲等」に当たるかどうかについて、条文や公的な資料は、私は確認していません。

狩猟免許と捕獲の許可の違いは「ドタドタがハクビシンならなぜ自分で駆除できない?資格と今夜すること」に書いた。

子どもがいる時期に入口をふさぐと何が起きるか

とべ動物園は、ムササビが屋根裏で「繁殖します」と書いている。その上で、ふさぐのは「追い出してから」としている。

子がいる時期に出入り口をふさいだ場合に何が起こるかについて、公的な資料は、私は確認していません。

ムササビがいつ出産するかについて、自治体や公的機関、博物館の資料も、私は確認していません。

学術論文には、一つの記録がある。八王子市の巣箱での調査では、延べ10個体のメスが子育てをした。「出産月は2月~3月および6月~9月」で、一度に生まれる子の数は平均1.3頭だった(繁田ほか・哺乳類科学 60巻1号・2020)。同じ調査では、最長で229日齢まで、母と子が同じ巣箱を使っていた。

これは八王子市の巣箱での10例であり、ムササビ全体に当てはまるわけではない。屋根裏に子がいるかどうかは、この時期だけで判断することはできない。

ムササビの相談先|市役所・都道府県・業者で聞けること

捕獲の許可は都道府県知事、あるいは権限を移譲された市町村長が出す。そのため、まずは住んでいる市区町村か都道府県の窓口に相談するのが最初のステップとなる。

横須賀市は、屋根裏や縁の下にムササビ、コウモリ、タヌキなどが住み着いたという問い合わせに対して、FAQで回答している。

「市販の煙によるゴキブリ等の忌避剤を使用すると追い払うことができるようです。1度でダメな場合でも2、3度繰り返して行えば効果があるとされております。」

市は「ようです」「とされております」と断定を避けている。くん煙剤がムササビに効くかどうかを確かめた資料は、私は確認していません。横須賀市の問い合わせ先は経営企画部自然環境課(電話番号:046-822-8528)だ。

東京都の窓口は、23区内は環境局自然環境部計画課鳥獣保護管理担当(電話番号:03-5388-3505)、多摩地区は多摩環境事務所自然環境課(電話番号:042-521-2948)となっている。

横須賀市や東京都以外の市町村の窓口については、私は確認していません。

市や都に聞くときは、次の3つを聞くと話が早い。

  • ムササビの捕獲の許可は、どこに申請するか
  • 追い出しや入口のふさぎに、許可が要るか
  • 許可を持つ業者を教えてもらえるか

自分でできることの限界と、業者に頼む目安

自分でできるのは、ここまでだ。

  • 屋根裏の出入り口を外から探す
  • 屋根に飛び移れる木の枝があるかを見る
  • 市区町村や都道府県に、許可と相談先を聞く

捕まえることは、許可がなければできない。

東京都は、有害鳥獣捕獲許可事業者リストを公表している(2026年2月20日現在)。このリストに載っているのは、掲載を了承した事業者だけで、すべての事業者が網羅されているわけではない。

東京都が主な有害鳥獣として挙げているのは、ニホンジカ、イノシシ、ニホンザル、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ムクドリなどと、外来生物のアライグマ・ハクビシンだ。ムササビはここには入っていない。ムササビに関する捕獲許可が出た事例や、その条件については、私は確認していません。

業者に頼む目安は2つある。

  • 屋根裏にいるのがムササビかハクビシンか、姿で確かめられないとき
  • 出入り口が高い所にあって、自分では見られないとき

業者に依頼する前に、ムササビに対応しているか、捕獲の許可が必要な作業なのかどうかを確認しておくと良いだろう。

まとめ|屋根裏にムササビがいるかもしれないとき、今夜すること

  • 屋根裏の音だけでは、ムササビかハクビシンかネズミかは決まらない。姿で確かめる
  • ムササビはりす科の哺乳類で、鳥獣保護管理法の「鳥獣」に入る。狩猟鳥獣ではない
  • 許可なく捕獲等をすると、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金(第八十三条 第一項 第一号)
  • とべ動物園の答えは、出入り口を見つけ、追い出してから蓋をすること
  • 子がいる時期にふさいだらどうなるかの公的資料は、私は確認していません
  • 相談先は、住んでいる市区町村か都道府県の窓口

今夜は、屋根裏の出入り口と、屋根に届く木の枝を家の外から見ておく。明日、市区町村の窓口に許可や相談先について聞いてみよう。

この記事で見た資料

  • 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(e-Gov)https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000088
  • 同法 施行規則(e-Gov)https://laws.e-gov.go.jp/law/414M60001000028
  • 環境省「捕獲許可制度の概要」https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/capture1.html
  • 横須賀市 よくある質問「屋根裏や縁の下などにムササビ、コウモリ、タヌキなどが棲みついてしまった」https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/faq/kurashi/eisei/choju/0242.html
  • 東京都環境局「野生鳥獣の捕獲について」https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/birds/capture
  • 東京都環境局「野生鳥獣による被害にお困りの方へ」https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/400100a20230418133155014
  • 愛媛県立とべ動物園 動物なんでもQ&A https://www.tobezoo.com/animals/question/article/000582.html
  • 繁田ほか「ムササビ(Petaurista leucogenys)メスの繁殖における時間的投資」哺乳類科学 60巻1号 p.33-44(2020)https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/60/1/60_33/_article/-char/ja/
  • 繁田ほか「野外におけるムササビ(Petaurista leucogenys)の多様な巣箱利用」森林野生動物研究会誌 46巻 p.1-12(2021)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjwrs/46/0/46_1/_article/-char/ja/

竹内 亮太(たけうち りょうた)

家で聞こえる音の正体を絞り込んで、次に何をすればいいかまで決められるようにするために、
このサイトを書いている。

害獣の駆除業者ではないし、自分の家に何かが出たこともない。だから体験談は書かない。
やっているのは、公的機関の資料を1件ずつ開いて、書いてあることと書いていないことを分けることだ。

音だけで正体は断定しない。
どこまで分かって、どこから先は天井裏に上がらないと分からないのかを分けて書く。

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